軍刀が出てきたときにチェックしたい軍刀の種類と対処方法・注意点
公開日 2024/09/03
更新日 2024/11/11
骨董品として鑑定や査定を受けることが多い刀剣類は、歴史的に価値の高いものも多くみられます。
軍隊の装備品である軍刀は、戦闘の際に使われる刀です。骨董品の鑑定では、武器としての性能だけではなく外観の美しさ、デザイン性も評価の対象です。
この記事では、軍刀の種類と登録証の有無による違い、登録証の審査に通らなかった場合について紹介します。処分や買い取りの方法や自宅から軍刀が出てきたときの注意点も取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
軍刀の種類として、日本刀式・サーベル式・短剣(短刀)を紹介します。それぞれの軍刀の特徴をみていきましょう。
日本刀式軍刀は、日本刀の形状を模して造られた軍刀です。日清・日露戦争などで消耗した日本刀を補うためにサーベル用の素材を使った刀が開発されました。
日本人は伝統的に日本刀を使用してきたことから、サーベル式の刀は使いづらいものでした。そのため、日本刀の形を保ったまま素材や装飾などを現代的にした日本刀式軍刀が登場します。
日本刀式軍刀は、軍刀に日本刀のデザインを採り入れているものです。持ち主によりさまざまなデザインが存在し、刀身の反り具合や外装が個性豊かで、和洋折衷のデザインが特徴的です。
サーベル式軍刀(サーベル型軍刀)は、護拳と呼ばれるツバが付いた軍刀です。
日本刀は両手に持って使いますが、サーベル式軍刀は片手で扱うため、持ち手部分に特徴があります。日本で作製されたサーベル式軍刀は、西洋風に日本刀のデザインを採り入れたものが多くみられます。刀身や柄が頑丈で、規格化されているものはデザインやサイズが共通しています。
サーベル式軍刀は日本で採用されて日が浅く、1877年の西南戦争などで使われていました。現在も自衛隊がサーベルを儀礼用に使っていますが、骨董品と呼ばれるものは旧日本軍が使用していたものに限られます。
短剣や短刀は、全長10cm〜30cm程度の刀の総称です。
国産のものは1尺(約30cm)以下の反りが少ない刀が短刀と呼ばれます。鎌倉時代から室町時代にかけては戦闘に用いられてきましたが、時代が移り変わるにしたがって護身用や日本刀の代用品として活躍しました。
刀身がわずかに反っているものに加えて、反りがまったくないストレート形の刀身も多くみられます。保存状態が良いもの、著名な刀匠による作品には高い価値がつけられています。
親族などの遺品整理や倉庫整理で軍刀を見つけたときは、登録証の有無を確認してください。
ここからは、登録証がある場合とない場合の対処方法をみていきましょう。
軍刀と登録証(銃砲刀剣類登録証)がどちらも見つかったときは、登録証の内容をみます。軍刀が本物であることを確認し、登録証自体も書式などから本物であることを確認してください。
登録証は、軍刀とともに鑑定に出します。証明書があれば真贋も判断しやすくなるため、鑑定結果に良い影響が期待できるでしょう。
証明するものがない刀剣が見つかったときは、最寄りの警察(生活安全課など)へ連絡し、発見届けを提出します。刀剣類の所在を警察署に把握してもらうための手続きです。
相続や所有をしなくても、登録証のない状態で軍刀やその他の鉄砲・刀剣を所有することは銃刀法違反の対象となります。万が一銃刀法違反が明るみになったときは懲役または罰金刑が課せられるため、忘れずに届け出てください。
軍刀がある住所を管轄する警察署の生活安全課などに連絡し、「銃砲刀剣類登録証」がないことを伝えてから、「銃砲刀剣類等発見届け」を記載します。
発見届けが受理されると「刀剣類発見届出済証」が発行されるので、軍刀とともに所持します。「刀剣類発見届出済証」を取得すれば、刀剣類を見つけたことが登録されます。
ただし、刀剣類発見届出済証を取得しただけでは、軍刀を所有することはできません。相続や譲渡、売却も同様です。対処方法②の登録を行い、銃砲刀剣類登録審査会で審査を受け、登録証の交付を受けてください。
見つかった軍刀を所有するための手続きとして、都道府県の教育委員会が行う「銃砲刀剣類登録審査会」に対処方法①で取得した刀剣類発見届出済証、その他の必要書類を持参して審査を受けます。
審査に合格すると「銃砲刀剣類登録証」が発行されます。この銃砲刀剣類登録証をもって、軍刀を所有・相続できるようになります。軍刀の所有者が代わったときは、新しい所有者が名義変更を行わなければなりません。
※銃砲刀剣類登録証は日本政府が鉄砲・刀剣の所持を認めるためのもので、昭和26年(1951年)から現在まで発行されています。古い時代の軍刀で、誰も登録を行っていないものについては銃砲刀剣類登録証の交付を受けてください。
関連記事:日本刀を所持するのに許可は必要?銃刀法の詳細や持ち歩く際の注意点
登録証の審査に不合格となった場合は、「登録不可通知書」が発行されます。
この通知書が届くと、その軍刀を所有することはできなくなります。所持が認められない刀剣類は警察署などへ持ち込み、破棄を依頼してください。
関連記事:日本刀を所持するのに必要な免許と注意すべき銃刀法に違反するケース
軍刀を所有しない場合は、処分または買い取りに出す方法が選べます。警察署で破棄を依頼するだけではなく、次のような選択肢もあります。
【買い取りの選択肢】
ここからは、3パターンの処分・買い取り方法をみていきましょう。
刀剣買い取り業者とは、日本刀などを中心に買い取りを行っている店舗です。査定や販売なども手掛けていることが多く、軍刀の買い取りにも対応してもらえる可能性があります。
注意点として、軍刀を売却するときは銃砲刀剣類登録証が必要です。登録証があることで銃刀法に違反していないことが証明できるため、売買が行える仕組みです。
登録証の交付を受けてない刀剣の売買はできません。万が一登録証がない状態で軍刀を持ち込むと、銃砲刀剣類登録証の交付を受けるように指示されます。
関連記事:高く売れる骨董品とは?売却で意識したい7つのコツと6つの注意点
遺品整理業者とは、故人が使っていた品物を片付けて整理し、買い取り・リサイクル・再利用、販売などを行う業者です(業者によっては片付けのみなど、対応範囲が限られる場合があります)。
遺品整理業者に軍刀の処分を依頼するときも、刀剣買い取り業者と同じく銃砲刀剣類登録証が必要です。登録証があれば遺品整理業者が買い取りなどを行えますが、証明書がない状態で軍刀のみを引き渡すことはできません。
軍刀や日本刀のような物品は自治体で回収を行っていないため、ゴミとして出すことができない物です。そのため、遺品整理業者が独自に回収・処分を行うことができません。
美術館や美術品としての価値が期待できる場合は、寄贈という選択肢も選べます。
ただし、美術館や博物館に飾ってもらう際にも銃砲刀剣類登録証を提出しなければならないため、都道府県の教育委員会で審査を受けて合格し、証明書の交付を受けなくてはなりません。
寄贈とは、所有者が所有権ごと軍刀などの物品を美術館や博物館に譲渡する方法です。権利ごと渡す仕組みのため、所有者であることを示す銃砲刀剣類登録証が求められるのです。
また、所有権を譲渡せず一時的に預ける「寄託」という方法もあります。こちらも所有権を示すものとして銃砲刀剣類登録証が必要になります。
自宅から軍刀が出てきたときは、次の点に注意しましょう。
【軍刀が出てきた時の注意点】
軍刀が見つかっても、すぐに第三者に売却や譲渡をすることはできません。登録証の有無を調べてから、記載内容が間違っていないことをチェックして、警察署に連絡を入れます。
発見の手続きでは、軍刀の発見場所を正確に記載しなければなりません。勝手に保管場所を変更しないように注意が必要です。
今回は、軍刀の種類と発見した際の対処方法や注意点について紹介しました。
軍刀といってもデザインや制作時期が異なり、希少価値の高いものから、一般的なものまでさまざまです。いずれも刀剣類という点で共通しており、武器として認められるもののため、所有・売却・譲渡のいずれも所有者の登録証が必要です。
自宅や親類の家、敷地などから突然軍刀が見つかったときは、慌てずに所定の機関へ連絡し、手続きを行ってください。
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この記事の監修者
義村 安悟(よしむら あんご)
《経歴》
美観堂 大阪本店店長 査定歴15年
《コメント》
複数の店舗で店長としての経験を活かし、身の回りのさまざまなジャンルのお品物を丁寧に査定しています。特に古美術品の買取においては、作品の歴史や芸術的価値、作家や時代の背景を考慮して査定を行っており、状態だけでなく市場の動向を踏まえ、公正で適正な価格設定を心がけております。
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