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刀剣・日本刀

日本刀の名前の由来とは?種類ごとの名付けと知名度の高い刀について

公開日 2025/04/18

更新日 2025/04/21

日本刀を売却したいと考えている方に向けて、刀の名前の由来について解説していきます。

日本刀には、一振りずつ名前がつけられていますが、「どうやって決めるのか?」「持っている刀の名前には価値があるのか?本物か?」など、名前が悩みの種になることもあります。

そこで今回は、刀の名前の由来について詳しく解説していきます。価値が高いとされる名前や、刀の特徴・種類についても紹介します。刀の価値を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

日本刀の名前の由来について

まずは、日本刀の名前の由来について見ていきましょう。刀の名前は多くの場合、「特徴」「刀工名」「持ち主の名」「逸話」のいずれかから付けられます。名前を決める4つの要素について、それぞれ詳しく見ていきましょう。

刀の特徴

日本刀の名前は、刀の特徴からつけられることが少なくありません。

【特徴からつけられた名前の一例】

  • 波紋:刃文が波のような形を形成していることから
  • 小沸:刃文が細かいことから
  • 三日月:刀身に三日月のように見える模様があることから

以上のように、刀独自の特徴をとって名前にすることが多くあります。特に刃文の形は、名前の由来になりやすいと考えられます。名前と刀の姿が一致するため、わかりやすい名前のつけ方と言えるでしょう。

刀工

日本刀につけられる名前の由来として、最も多いのが「刀工の名前」かもしれません。刀工の名前は、現代で言えばブランドのような存在です。

【一例】

  • 妖刀村正:刀工一派であった「村正」の名を冠している
  • 鬼丸国綱:作刀者である国綱の名前がつけられている
  • 有楽来国光:作刀者である来国光の名前がつけられている

その他にも刀工の名前がつけられた日本刀は非常に多く存在します。一例のように、作刀者の名前がそのまま日本刀の名前となる例も多く見られました。

持ち主

作刀者ではなく、持ち主の名前がそのまま日本刀の名前になった例もあります。

【一例】

  • 石田正宗:石田三成が愛用していた
  • 髭切:織田信長の別名「第六天魔王」にちなんで名づけられた

持ち主の名前は銘として切られることもあり、オーダーメイドのように依頼した刀に多く見られました。また、持ち主が変わると新たな持ち主が銘を入れ直すこともありました。特に持ち主の位が高い場合、そのまま刀の名前になったこともあったと考えられます。

刀にまつわる逸話

日本刀の中には、逸話から名前がつけられたものもあります。

【一例】

  • 鬼丸国綱:夢の中に出てきていた子鬼を討伐したため
  • 鬼斬丸:鬼を退治したときに使用した刀であったため
  • 蛍丸:刀に無数の蛍が群がる夢を見て目を覚ますと刀が修復されていたため

いずれも鬼退治や夢の内容が由来であり、実際の出来事ではないと考えられていますが、逸話から生まれた刀の名前はまだまだたくさんあります。

日本刀の種類と特徴

続いては日本刀の種類と特徴からつけられる名前についてご紹介していきます。

種類1:直刀

直刀は古墳時代から奈良時代にかけて多く作られたとされています。反りがなく真っ直ぐで、武器としてはもちろん献上品や贈答品、儀式のための道具としても作られていました。長さは刀によってさまざまですが、その後に制作された刀に比べて、真っ直ぐであり権威の象徴ともされた武具です。

種類2:太刀

直刀に比べて外側に反っているのが「太刀」です。平安時代後期から戦国時代にかけて多く制作された刀であるとされています。長さは70cmから80cm程度であるのが一般的でしたが、より長い「大太刀」、短い「小太刀」も作られていました。平安時代から戦国時代には騎馬戦が行われており、馬上からでも斬りやすい形状として太刀は、そういった目的で作られた刀です。

種類3:打刀

「打刀」は太刀よりも短く、徒戦にて使用されるために制作された刀のことです。太刀よりも反りが浅く、室町時代中期から江戸時代まで使用されていました。現代において「日本刀」と聞いて最もイメージされるのが、この打刀だと考えられます。長さは60cmから80cmほどとバリエーションが豊富で、太刀と間違われることもありますが、太刀は刃を下向きにして腰に下げるのに対し、打刀は刃を上にして携帯しました。片手でも使用できるタイプの刀です。

種類4:短刀

名前のとおり、短い形状であるのが「短刀」の特徴です。長さは30cm未満しかありません。そのため懐に収めるための刀として使用されることが多く、太刀や打刀の補助としての役割を果たしていました。その短さから女性や子どもが携帯していたことも多かったとされます。切腹の際に短刀が用いられていた例もあります。

形状は反りがない平造りで、護身用として使われるだけでなく、お守りとしても用いられていました。

種類5:薙刀

「薙刀」は日本刀ではなく槍の一種とされています。南北朝時代に広く利用されていましたが、その後、槍が広まったため徐々に制作されなくなりました。柄の長さが150cm程度と長く、江戸時代になると長く相手との距離をとれることから女性用の武器として再び脚光を浴びることに。武家の女性は、教養の一環として薙刀術を学んでいました。

長柄の武器であり、なぎ切るように使用することが特徴。江戸時代には道場が各藩に開設されていたと伝えられており、広く普及していた武器です。

種類6:槍

薙刀とともに長柄の武器のひとつであるのが「槍」です。薙刀は薙ぎながら攻撃することが特徴でしたが、槍は突くことを得意とします。そのため、薙刀のように周囲の味方を巻き込むことなく、狙った敵だけを攻撃できる点が利点とされます。鎌倉時代から安土桃山時代にかけて多く利用されていました。

槍は「大身槍」「菊池槍」「鎌槍」「袋槍」など、形状によって名前が変わります。時代ごとに作られた槍の種類も異なったため、日本刀に属する武器の中でも、種類が多い部類に入ります。

種類7:脇差

「脇差」は30~60cm程度の日本刀の名前で、太刀や打刀とともに使用されていました。短刀と同じような使い方ですが、脇差しの方が長いため、実戦において優れていたと考えられています。近距離戦や狭い場所での戦闘に役立つ刀でした。

脇差しは長さにより「大脇差」「中脇差」「小脇差」の3種類に分類されます。大脇差は55〜60cm、中脇差は40〜55cm、小脇差は40cm未満のものです。武士だけでなく庶民も携帯していた武器で、江戸時代においては多く制作されました。

有名な名前の日本刀一覧

広く知られている有名な日本刀について4種類ご紹介します。刀に関する知識を深めたい方は、ぜひ参考にしてください。

1.天下五剣

まずは名刀と名高い「天下五剣」をご紹介します。天下五剣とは、日本刀の中でも特に完成度が高いとされる5振の名刀を指します。それぞれ伝来や作られた時代は異なりますが、現代でも最上級の日本刀として位置づけられています。

天下五剣の基本情報

天下五剣の基本情報は次のとおりです。

名称 種類 鑑定区分 時代 伝来 所蔵
童子切安綱 太刀 国宝[1] 平安時代 源頼光・足利家・豊臣秀吉・徳川家康 東京国立博物館[1]
三日月宗近 太刀 国宝[2] 平安時代 足利家・徳川忠義 東京国立博物館[2]
鬼丸国綱 太刀 御物 鎌倉時代 北条時頼・新田義貞・斯波高経・織田信長・豊臣秀吉・徳川家康 皇室
大典太光世 太刀 国宝[3] 平安時代 足利家・徳川家・前田家 前田育徳会[3]
数珠丸恒次 太刀 重要文化財 平安時代末期~鎌倉時代初期 日蓮 兵庫県・本興寺

平安時代から鎌倉時代にかけて制作された天下五剣

天下五剣は平安時代から鎌倉時代にかけて制作された5振のことです。

数珠丸恒次は仏法との関連性が深く、日蓮聖人に護身用として寄進されたとされています。「童子切安綱」は鬼である酒呑童子を切ったことから、「鬼丸国綱」は、夢に現れて北条時頼を苦しめた子鬼を退治した逸話に由来して名付けられました。大典太光世は作刀者の名前から、三日月宗近は刀身にある三日月模様から名付けられたとされています。

2.天下三作

続いては天下三作について見ていきましょう。天下三作とは、名刀を作ったとされる三人の刀工の総称で[4]「粟田口吉光」「正宗」「郷義弘」のことを指します[4]。

天下三作の基本情報

まずは天下三作のそれぞれが制作した代表作についてご紹介します。

名称 種類 鑑定区分 時代 伝来 所蔵
厚藤四郎(作:粟田口吉光) 短刀 国宝 鎌倉時代 足利家・本阿弥光徳・一柳直末・黒田孝高・豊臣秀次・豊臣秀吉・毛利家・徳川家綱・一橋家 東京国立博物館
不動正宗(作:正宗) 短刀 重要文化財 鎌倉時代 本阿弥光二・豊臣秀次・徳川家康・前田利家・徳川将軍家・尾張家 徳川美術館
稲葉江(作:郷義弘) 打刀 国宝 南北朝時代 稲葉重通・徳川家康・結城秀康・津山松平家・作州松平家 柏原美術館

豊臣秀吉が愛した天下三作

豊臣秀吉は刀の収集家でもあり、「粟田口吉光」「正宗」「郷義弘」の刀を特に愛していました[4]。そして後に、前述の3人の刀工が「天下三作」と呼ばれるようになった経緯があります[4]。

粟田口吉光は短刀が得意であり、太刀は「一期一振」のみしかありません。そして正宗は華やかで力強く、迫力のある日本刀を得意としました。郷義弘は27歳で逝去したため作刀数が少ないうえに銘がなく、贋作が多く出回っていますが、明るく冴えた刀を作る刀工として知られていました。

上記の三者は「天下三作」として、高い価値を持つ刀を世に送り出しました。

3.戦国三英傑にまつわる名刀

続いては戦国三英傑にまつわる名刀についてです。戦国三英傑とは織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の3人のこと。彼らが所有していた刀は、持ち主の知名度も相まって、高い価値があるとされています。

戦国三英傑にまつわる名刀の基本情報

名称 種類 鑑定区分 時代 伝来 所蔵
鬼丸国綱(織田信長所有) 太刀 御物 鎌倉時代 北条時頼・新田義貞・斯波高経・織田信長・豊臣秀吉・徳川家康 宮内庁侍従職
骨喰藤四郎(豊臣秀吉所有) 脇差 重要文化財 鎌倉時代 源頼朝・足利尊氏・豊臣秀吉・徳川家康 豊国神社
物吉貞宗(徳川家康所有) 脇差 重要文化財 鎌倉時代 徳川家康・尾張徳川家 徳川美術館

歴史上の重要人物が所有した刀

いずれも皇室に所蔵される御物や、重要文化財など、国の宝とされている名刀です。鬼丸国綱は天下五剣のひとつでもあります。鬼丸国綱以外は、展覧会などで公開される機会もあるでしょう。

4.日本三名匠にまつわる名刀

最後に「日本三名匠」にまつわる名刀について見ていきましょう。三名匠とは「三条宗近」「友成」「大原安綱」です。

日本三名匠にまつわる名刀の基本情報

まずは刀の名匠と、その伝来について解説します。

名称 種類 鑑定区分 時代 伝来 所蔵
銘三条(作:三条宗近) 太刀 国宝[2] 平安時代[2] 豊臣秀吉の正室高台院・徳川秀忠・徳川家[2] 東京国立博物館[2]
鶯丸(作:友成) 太刀 御物 平安時代 足利家・小笠原家・明治天皇 三の丸尚蔵館
鬼切安綱(作:安綱) 太刀 重要文化財 平安時代 坂上田村麻呂・源頼光・渡辺綱・新田義貞 北野天満宮

日本の宝とされている日本三名匠の刀

日本三名匠による刀も、国の宝とされています。国宝・重要文化財、天皇所蔵の御物など、これらは、後世に語り継ぐべき国の宝といえるでしょう。

名前がかっこいい日本刀一覧

最後に、名前が印象的な日本刀を一覧で紹介します。

名称 種類 鑑定区分 時代 伝来 所蔵
波游ぎ兼光 打刀 重要文化財 戦国時代 上杉家・羽柴秀次・豊臣秀吉・小早川秀秋・松平忠輝・立花宗茂 個人蔵
人間無骨 未鑑定 室町時代 森家 個人蔵
獅子王 太刀 重要文化財 平安時代 源頼政・徳川家康・土岐家・明治天皇 東京国立博物館
妖刀村正 打刀 重要刀剣 室町時代 刀剣ワールド財団
骨喰藤四郎 脇差 重要文化財 鎌倉時代 源頼朝・足利尊氏・豊臣秀吉・徳川家康 豊国神社

ここでは、それぞれの特徴や由来について解説します。

1.波游ぎ兼光

「波游ぎ兼光」は長船兼光によって制作された刀です。船を渡しているときに客が斬りつけると、斬られたと気づかれないまま船で渡りきり、渡ったときに身体が2つに分かれたと言われます。この逸話は、切れ味の鋭さを象徴する名前であることを物語っています。現在は重要文化財に指定されていますが、個人蔵ですので見られる機会はほぼないでしょう。

2.人間無骨

和泉守兼定によって制作されたのが「人間無骨」です。人間に骨がないかのように、滑らかに斬れることから名付けられたとされています。織田信長の家臣である森長可が愛用していたことで知られており、そのまま森家が所蔵しています。

3.獅子王

源頼政が「鵺」と呼ばれる妖怪を退治したときに使用したとされています。後年になり徳川家康が所有したこともあり、歴史的価値が高い刀とされています。その後明治天皇へと献上され、重要文化財として指定されました。現在は東京国立博物館が所蔵しています。

4.妖刀村正

妖刀として知られる「村正」は、徳川家に忌避された刀として知られています。徳川家康の祖父と父を討ち取ったこと、嫡男の切腹の際に使用されたことなど、徳川家康にとっては忌むべき刀でした。そのため妖刀と言われるようになり、現代においても不吉な刀とされながらも、高い人気を集めています。

5.骨喰藤四郎

斬ろうとマネをしただけで骨まで砕くと言われたことからつけられた日本刀の名前です。非常に優れた切れ味を持つとされており、大阪夏の陣にて消失されたとされていましたが、その後美しい状態で発見され、徳川家康の手に渡りました。

日本刀の名前にはれっきとした由来がある

いかがでしたでしょうか?この記事を読んでいただくことで、日本刀の名前の由来についてご理解いただけたと思います。刀には名前がつけられていますが、刀工や持ち主の名前、逸話などさまざまな由来があります。

美観堂では、日本刀の専門鑑定士による買取を行っており、名前が不明な刀でも適正に査定いたします。
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[1]

参照:e国宝:太刀 銘安綱(名物童子切安綱)たち めいやすつな めいぶつどうじぎりやすつな

[2]

参照:e国宝:太刀 銘三条(名物三日月宗近)たち めいさんじょう めいぶつみかづきむねちか

[3]

参照:国指定文化財等データベース:国宝・重要文化財(美術工芸品)

[4]

参照:京都国立博物館:秀吉の愛した天下三作-吉光・正宗・義弘-(「京へのいざない」第2期展示)

[5]

参照:e国宝:太刀 銘三条(名物三日月宗近)たち めいさんじょう めいぶつみかづきむねちか

この記事の監修者

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義村 安悟(よしむら あんご)

《経歴》

美観堂 大阪本店店長 査定歴15年

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複数の店舗で店長としての経験を活かし、身の回りのさまざまなジャンルのお品物を丁寧に査定しています。特に古美術品の買取においては、作品の歴史や芸術的価値、作家や時代の背景を考慮して査定を行っており、状態だけでなく市場の動向を踏まえ、公正で適正な価格設定を心がけております。
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