掛け軸の種類とは?どのようなときに使うべき?形式・様式の違いまで
公開日 2024/09/04
更新日 2024/09/04
掛け軸を所有している方に向けて、掛け軸の種類について詳しく解説します。
床の間に掛け軸を飾ろうとするとき、何本か持っていると飾る種類に困ることはありませんか?
実はさまざまな種類があり、種類によって用途が変わることも。
そこで今回の記事では、掛け軸の種類や用途について解説します。
参考にしていただければ、どのようなときに、どのような掛け軸を飾るべきかご理解いただけるはずです。
目次
掛け軸とは、中国から日本に伝来した美術品のことです。
日本に伝わったのは6世紀ごろだと言われています。
当時は礼拝の対象であり、美術品ではなく宗教のためのものとして用いられていました。
そのため仏様が描かれたものがほとんど。
時代を経るうちに花や鳥などの自然物が描かれることが多くなり、美術品として定着した経緯があります。
室町時代には茶道が発展し、茶道の場にふさわしい美術品として広まりました。
さらに江戸時代には一般庶民の住宅にも飾られるようになり、現代においてもその風習は絶えていません。
掛け軸の用途は、大きく分けて「床掛け用」と「仏壇用」の2種類があります。
それぞれの種類の特徴について見ていきましょう。
床掛け用は観賞用の装飾品として用いられる掛け軸のことです。
床掛け用は美術品であり、床の間に掛けられることがほとんどです。
書や絵、書と絵を組み合わせた作品が多く見られ、茶道における美術品として用いられてきました。
和室に季節感を添えたいときや、インテリアとして装飾を加えたいときに飾るためのものです。
花や鳥などのモチーフが描かれていることが多く、観賞用として適します。
もし床の間になにか掛け軸を飾りたいと思われるなら、床掛け用を選ぶと使いやすいでしょう。
仏壇用はその名の通り、仏壇にかけるために使われるもの。
仏壇を祀るために使われるものであり、仏様が描かれているものも多数あります。
礼節として本尊と両脇侍の3本を1組として飾ります。
仏壇に仏像を置けない場合、代用として掛け軸が飾られることも珍しくありません。
仏像を置く場所がない、仏像がないなどの場合は、仏壇用の掛け軸を使ってください。
掛け軸には床掛け用と仏壇用の2種類がありますが、さらに2つの形式に分けられます。
「大和表装」と「文人表装」です。
掛け軸の基本的な種類について知っておきましょう。
まずは「大和表装」についてです。
大和表装とは掛け軸としての一般的な種類であり、「真」「行」「草」の3つのタイプに分かれます。
タイプにより格式の高さが異なるため、「真→行→草」の順で格式が分類されます。
使う掛け軸のパーツも変わってくるため、どのタイプであるかを知っておかなければなりません。
大和表装の3つのタイプについて、詳しく見ていきましょう。
「真」は仏教における礼拝のために作られる様式です。
3つの様式の中でも最も格式が高いのが真。
大和表装の行では「真の真」「真の行」「真の草」に分けられます。
【真】
上記のように3つに分かれており、様式によって格式も異なります。
真の掛け軸は基本的に、中央にある画や書が描かれている部分が小さいことが特徴です。
そして周りに細めの枠があり、掛け軸自体の形を形成する部分が広い傾向にあります。
掛け軸自体に対して、画や書画書かれている和紙の部分が狭めです。
「行」は大和表装において最も一般的だとされる様式です。
仏画以外であればさまざまな作品に使用できるため、よく目にすることでしょう。
真と同じように、次の3つの様式に分けられます。
【行】
行の真が最も格式が高く、行の行、行の草と続きます。
行は真に比べて、装飾部分の周りに使われている枠が広めです。
掛け軸は本体を形成する部分と、その中にある枠と、さらに中央部分にある白い和紙の部分とで作られています。
行は中央にある枠の部分が太めであり、掛け軸本体とほぼ同じサイズであることが多いでしょう。
真は仏教の礼拝に用いられる反面、行は装飾品として用いられるものであり、より華やかな印象です。
「茶掛け」とも呼ばれており、茶道の席で用いられるのが「草」です。
最大の特徴は柱が狭いこと。
茶道の席で用いられるだけあり、華美な印象がなく、一文字廻しはありません。
【草】
草のみ2種類しかありません。
草の草は掛け軸の種類の中でも、最もシンプルな形式です。
掛け軸本体と画や書が描かれている部分との差がほとんどなく、枠が細い傾向にあります。
そのため装飾部分が目立ち、画を大きく見せたいときに用いられるものです。
真や行に比べると華やかな印象となるでしょう。
掛け軸本体に目いっぱいの面積で画や書が描かれているなら、「草」であると考えられます。
「文人表装」は中廻し・外廻しの区別がないことが特徴です。
左右上下を一種類の布地でまとめており、大和表装も含めて掛け軸の中で最も簡素なタイプとなります。
風帯もつきません。
書にも画にも用いられますが、書の表装に用いられることがほとんどです。
掛け軸の形式や様式について見てきました。
掛け軸にはさまざまな種類があり、場面によって用いられることが変わります。
主に見られる7つの掛け軸の種類について解説するので、場面や用途によって使い分けましょう。
仏画の掛け軸は、弔事・彼岸・盆などに用いられる供養のための仏壇用の掛け軸です。
仏様を祀るために飾られます。
仏壇における御本尊の役割を果たすものです。
飾るときには中央にご本尊となる掛け軸を置き、脇掛をご本尊の両脇に置いてください。
ただし飾り方は宗派によって異なります。
仏教には曹洞宗、天台宗、真言宗などさまざまな宗派があるため、ご自身の家がどの宗派なのか確認しましょう。
仏画の掛け軸を飾る際には、仏壇に置く前に開眼供養を行います。
そして廃棄する際には閉眼供養を行うのが習わしです。
仏壇の中に飾るものなので、購入の際にはサイズに問題がないか確認してください。
飾れなければ意味がありませんので、収まるサイズのものを選びましょう。
書が書かれた掛け軸は、茶室において好まれるタイプです。
茶室においてはお客様をもてなすために用いられることが多いでしょう。
お客様に対する気持ちを認めた書を用います。
そのため見た目ではなく、書かれている内容が重要です。
多く見られるのは禅語や教訓など。
茶室との関連性が高いのは、禅語が書かれた掛け軸です。
しかし最近では、書道家が作ったデザイン性重視の書の掛け軸もあります。
和室のデザインや雰囲気などのインテリアを重視するのであれば、デザイン性重視の掛け軸を選ぶのもひとつです。
いくつかそろえれば、かけかえるだけで室内の雰囲気を大きく変えられるようになります。
茶道を嗜まないのであれば、デザイン性の高い書の掛け軸を飾っても良いでしょう。
年間を通して飾り続けられるのが、縁起物の掛け軸です。
福を呼んだり邪気を払ったり、家内安全を願ったりする目的で飾られます。
たとえば松竹梅、七福神、鶴、亀、虎、龍などがモチーフとなっている掛け軸が縁起物として有名でしょう。
花や季節の行事に関連する掛け軸は、飾る期間が限られてしまいます。
しかし縁起物の掛け軸であれば、季節を問わず、いつでも飾れるところがメリットです。
和室にお客様を招いたとしても、縁起物の掛け軸であれば印象が悪くなることはなく無難なものとも言えます。
ただし掛け軸は長期間飾ったままにすると劣化しやすくなるため、縁起物であっても定期的に入れ替えてください。
季節を考えずとも飾れる掛け軸を希望するなら、縁起物をおすすめします。
寿ぎの掛軸は祝儀の際にかけるために用いられます。
結納や結婚式、記念日、元旦などに最適です。
祝儀の際にはお客様を招くことも多いでしょうから、掛け軸を飾るならぜひ揃えておきたい種類の掛け軸でしょう。
ただし年間を通していつでも飾れるモチーフの掛け軸も見受けられます。
モチーフとしては鶴や旭日、蓬莱山、紅白、松竹梅、松などです。
いずれにしても神様を迎える意味を持つ掛け軸であり、縁起物の掛け軸としても利用できるでしょう。
季節の掛け軸は美術品としてのものに多く見られます。
掛け軸が美術品へと変わった頃は、花や鳥などの自然物を描いたものが多く作られたためです。
そのため和室で季節感を演出したい場合は、掛け軸を飾るのがおすすめ。
以下のモチーフを基準にして選んでください。
春 | 1~4月 | 桃・梅・桜・うぐいす |
夏 | 4~8月 | 朝顔・紫陽花・カワセミ・金魚・滝・清流 |
秋 | 8~11月 | 栗・柿・紅葉・落ち葉・秋桜 |
冬 | 12~2月 | 水仙・椿・牡丹・菊・南天・紅白梅 |
掛け軸の飾り方のポイントは、実際の季節よりも少し早めのモチーフを選ぶことです。
早春の前に春のモチーフを飾れば、春への期待が増すでしょう。
現代では8月で秋は早いように感じられるものです。
しかし立秋はお盆前に訪れることもあります。
基本的に二十四節気を参考にすると、掛け軸のモチーフも選びやすいのではないでしょうか。
季節感を表現したいときは、上記の季節とモチーフを参考にしてください。
より限定的な季節感を表現するなら、節句の掛け軸を飾ってみてください。
桃の節句、端午の節句のモチーフはよく見られるものです。
節句の掛け軸は行事を祝う意味がありますが、季節の掛け軸として飾れるところもメリットでしょう。
画だけのものもありますが、画と書を織り交ぜたタイプの掛け軸もあります。
俳句や和歌がかかれた短冊を飾るタイプのものもあり、数ある掛け軸の種類の中でも特に豊富なバリエーションを誇ります。
彩色山水の掛け軸は、年間を通して飾れる使い勝手の良い掛け軸です。
遠景・中景・近景を表現する遠近法を取り入れた景色画のことを指します。
たとえば手前に河川と家があり、奥には木々が、さらに奥には滝や山が、とのように描かれます。
自然の風景を見たままで描いているので、床の間を飾る目的に適している掛け軸です。
色味を少なくして景色を描いているので、特に季節感や祝い事の意味を持たせたくないときに良いでしょう。
いかがでしたでしょうか?
この記事を読んでいただくことで、掛け軸の種類についてご理解いただけたと思います。
掛け軸にはさまざまな種類があります。
様式も多種多様ですが、描かれているモチーフなどによって飾る目的や季節も変わるものです。
掛け軸の買取なら美観堂で骨董品を専門として買取を行っています。
もしご不要な掛け軸をお持ちであれば、種類を問わず買取いたしますのでぜひお気軽にご連絡ください。
この記事の監修者
義村 安悟(よしむら あんご)
《経歴》
美観堂 大阪本店店長 査定歴15年
《コメント》
複数の店舗で店長としての経験を活かし、身の回りのさまざまなジャンルのお品物を丁寧に査定しています。特に古美術品の買取においては、作品の歴史や芸術的価値、作家や時代の背景を考慮して査定を行っており、状態だけでなく市場の動向を踏まえ、公正で適正な価格設定を心がけております。
また、遠方にお住まいのお客様からのご依頼も多い中、出張買取を通じて、さらにお役に立てるよう努めてまいりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。
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